健康辞典「病気のこと」
肝臓は、生体の化学工場と呼ばれ、「肝心 (肝腎) かなめ」の言葉どおり、生体に欠かせない多種多様な働きを受け持っています。そのため、肝臓の病気も複雑多様であり、一言で「肝臓病」と言っても脂肪肝、急性肝炎、慢性肝炎、肝硬変、肝ガンなどたくさんの種類があります。
肝臓の働き
生活習慣から起こる肝臓病
この中で、初期の肝臓病である脂肪肝は、飲みすぎや食べすぎなどの生活習慣が原因となります。近年のグルメ志向や飲酒量の増加といったライフスタイルの変化から、いまや約3人に1人までが脂肪肝であると推定されています。脂肪肝は肝硬変などの重い肝臓病への入り口であり、また、糖尿病や痛風などの他の生活習慣病への入り口ともなります。
肝臓は障害が80%程度に及んだ時、初めて機能不全になると言われる程、その処理能力には余裕があります。そのため、少々悪くなっても自覚症状は出にくく、それゆえ「沈黙の臓器」と言われています。肝臓病は、本人が気付きにくいことから最近では増加傾向にあり、「21世紀の国民病」とまで言われています。
脂肪肝の場合・・・
飲みすぎ、食べ過ぎによるアルコールや中性脂肪の摂取過多です。アルコールは通常、肝臓で処理されますが、肝臓の処理能力を越えた部分に関しては脂肪に姿を変えて肝細胞内に蓄積され、脂肪肝の原因となります。
肝炎の場合・・・
肝炎ウイルスに感染すると、感染した肝細胞に対して免疫機構が働き、肝細胞を破壊してしまいます。これが、ウイルス性の肝炎です。
飲食物などを介して口から感染する → A型肝炎
血液、体液を介して感染する → B型およびC型肝炎
また、肝臓は毒性の強いアルコールや薬剤などの処理を行っていますが、これらの薬物により直接細胞が障害を受けた場合も、肝炎となります。
肝硬変の場合・・・
肝炎が慢性化すると肝臓の細胞は次々に壊されていきます。壊された細胞は繊維状の組織となって、肝臓は小さな瘤を形成し、硬くなってきます。この状態を肝硬変といいます。肝硬変になると、肝臓内の血液の流れが悪くなるため、肝細胞への血液の供給も悪くなり、肝機能は著しく低下してしまいます。
肝臓ガンの場合・・・
大部分の肝臓ガンは肝硬変から生じます。また、肝硬変からのガンの発育には、肝炎ウイルスの関与が確実視されています。
生活習慣の乱れ → 脂肪肝
ウイルス感染 → 急性肝炎 → 慢性肝炎 → 肝硬変 → 肝臓ガン
| 脂肪肝 | 無症状もしくは体がだるいといった程度の自覚症状 | |||||
|---|---|---|---|---|---|---|
| 肝炎 | 慢性肝炎 | |||||
| 急性肝炎 | はげしい食欲低下や疲労感、吐き気。発熱や黄疸 | |||||
| 肝硬変 | 食欲不振、むくみ、皮膚出血
手掌紅斑:指や指の付け根が赤くなる。 女性化乳房(男性のみ):乳房・乳首が大きくなる。
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さらに、肝機能の低下が進むと、腹水がたまり、肝臓で代謝されなかったアンモニアが脳に達して精神症状を起こす「肝性脳症」から「肝性昏睡」にいたります。
肝臓病はよほど進行しないかぎり自覚症状は現れません。そのため、早期の異常をいかに発見するかが重要となります。早期発見のため、健康診断や人間ドッグなどを定期的に受診しましょう。肝臓の状態を把握するための検査には、血液 (尿) 検査、画像検査、病理検査などがあります。
血液 (尿) 検査
血液中や尿中で肝臓に関係のある酵素の活性や物質の濃度を測定することで肝臓の状態を推測します。また、肝炎ウイルスの感染が疑われるときには、ウイルスマーカーの検査も行います。
画像検査
肝臓の形、大きさ、性状の変化を把握し、肝臓病の進行度を評価するために行います。肝臓ガンの発見には特に有効な検査方法です。
病理検査
肝臓の細胞や組織を採取し直接観察します。慢性肝炎や肝硬変の進行度を正確に知りたい時や、肝臓腫瘍の良性と悪性の区別が難しい時に有効な検査方法です。
| 血液 (尿) 検査項目 | 正常値 (基準値) |
|---|---|
| GOT(グルタミン酸オキサロ酢酸トランスアミナーゼ) | 8〜35 IU/l |
| GPT(グルタミン酸ピルビン酸トランスアミナーゼ) | 5〜35 IU/l |
| プロトロンビン時間 | 11〜14秒 |
| アルブミン | 3.6〜5.0g/dl |
| ChE (コリンエステラーゼ) | 男性203〜460 IU/l 女性179〜355 IU/l |
| 血糖 (空腹時) | 65〜110mg/dl |
| 総ビリルビン | 0.2〜1.3 mg/dl |
| ALP (アルカリフォスファターゼ) | 95〜305 IU/l |
| γ-GTP(γ-グルタミルトランスペプチダーゼ) | 男性5〜50 IU/l 女性2〜35 IU/l |
| HBs抗原 | 陰性 |
| HCV抗体 | 陰性 |
| 抗HA-IgM抗体 | 陰性 |
| 尿ビリルビン | 陰性 |
肝臓病では、病状によって適切な治療法を選びます。
肝臓病の初期状態である脂肪肝では、食事の量を4分の3程度に減らして、軽い運動を続ければ2週間程度で改善効果が現れます。
しかし、症状が進行して慢性肝炎となると、肝炎の進行を押さえることが重要となります。そのための薬物療法として、肝細胞の壊れるのを防ぐ肝庇護薬や、ウイルス性の場合、ウイルスを排除するインターフェロンや抗ウイルス薬を投与します。
さらに肝硬変へと進行してしまった場合、慢性肝炎と同様の薬物療法の他に、食道静脈瘤、腹水、肝性脳症といった合併症に対する治療が必要となります。また、肝硬変では食事療法も重要となります。
肝炎ウイルスの感染による肝臓病を予防するには、ウイルスが進入しにくい体作りを心掛ける必要があります。
疲労やストレスは免疫力を低下させてしまうので、バランスの良い食生活、適度な運動、十分な休息をとって、日頃から免疫力を高めておくことが有効です。
肝臓病予防のポイント
飲みすぎによる肝臓病を予防するには、まずお酒を飲まないことです。しかし、どうしても飲みたい人や、お酒を断れない人は、普段から肝臓の機能を高めておくことが重要となります。体内に入ったアルコールを出来るだけ早く分解すれば、それだけ肝臓自身へのダメージを避けることが出来るからです。
肝臓の機能を高めるには?
肝臓がアルコールを処理する際に必要な酵素の働きを高めるためにはビタミンB類やビタミンCが必要です。
また、ウコンやマリアアザミは古くから肝臓の薬として使われており、肝臓の働きを高めることが期待できます。
●注目の成分『クルクミン』・『シリマリン』
ウコンの主成分であるクルクミンには、アルコールを分解する際に必要な胆汁の分泌を促す作用があるため、二日酔いの予防効果が期待できます。クルクミンには体内の解毒酵素系を活性化させるという働きもあります。体内に取り込まれたアルコールなどの毒素は、肝臓から産出される酵素により無毒化されています。また、動物実験においては、脂肪肝に効果のあることが確認されています。
マリアアザミの抽出物に含まれるシリマリンは、アルコールなどの毒素から肝細胞を守る働きや肝細胞を修復する働きがあると言われています。臨床試験においては、肝硬変患者の生存率を高めることが確認されています。